デンタルニュース

2016.6月号 恐怖の「歯周病菌レッドコンプレックス」とは…?

★歯周病ってどんな病気?
歯周病は、プラーク(歯垢)によって歯ぐきが腫れたり、歯の周りの骨が溶けていき、最終的には歯が抜けてしまう病気です。初期症状がほとんどない為、気づいた時には手遅れになっていることが多く、沈黙の病気とも言われています。日本人の成人の 80%が罹っており、なんと人類史上最大の感染症としてギネスブックに認定されています。この歯周病は、主に中学生頃にお箸の共有、キス、くしゃみなど、他人の唾液を介して感染します。
★恐ろしい「歯周病菌レッドコンプレックス」とは?
私達のお口のなかには、菌が 300~700 種類ほど生息しています。その中で歯周病の原因となる菌を「歯周病関連性菌」と呼びます。歯周病関連性菌にはそれぞれ病原性の違いがあり、特に毒性が高く歯周組織、血管、全身にダメージを与える 3 種類の歯周病菌、ポルフィロモナス・ジンジバリス、トレポネーマ・デンティコーラ、タンネレラ・フォーサイセンシスの 3 菌種を、赤信号という意味で「レッドコンプレックス」と呼んでいるのです。位相差顕微鏡でプラークを検査してレッドコンプレックスが見つかると一大事。すぐに治療を始める必要があります。
★歯周病はすぐには発症しない
歯周病菌に感染しても、中高年期までは歯周病にはなりません。若いうちは歯垢や歯石などにいる歯周病菌の病原性と歯周組織の抵抗力が均衡しているからです。しかし加齢によって抵抗力が弱まると次第にこの均衡が崩れ、歯周病菌の毒性が高まって歯周病を発症するのです。
★レッドコンプレックスは鉄分が大好き
レッドコンプレックスは、血液の中に含まれる鉄分を栄養素としています。
健康なお口の中で出血がなければ、レッドコンプレックスは栄養不足で増殖できません。しかし、プラークの塊である歯垢や歯石に含まれる歯周病菌は時間が経つと病原性を増す性質があります。お口の清掃状態が悪く磨き残しがあると、病原性を増して歯周炎を起こします。そして歯茎から出血すると、血液中の鉄分を餌に歯周病菌が一気に増殖し、病原性がさらに高まります。ここからはもう悪循環です。「歯を磨いていたら血がでた!」は歯周炎発症を知らせる赤信号なのです。
★歯医者さんでしっかりとケアを!
歯みがきやデンタルフロスなどを使って日頃どんなに丁寧に歯を磨いていても、プラークを100%落とすことはできません。そして磨き残したプラークは歯石になり、約 3 ヶ月ほどで病原性を増していきます。歯周病やむし歯を予防するためには、歯科医院へ行って、落としきれない汚れを歯科衛生士が専用の器械や器具を使って徹底的に掃除する必要があるのです。
歯周病は動脈硬化、高血圧、脳疾患系、糖尿病、アルツハイマー型認知症など、様々な全身疾患に影響を与えることが分かっています。健康の為に、3 か月に 1 度は歯科医院でお口のクリーニングを受けましょう。詳しくは担当医師か歯科衛生士にお問合せください。

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